鰹節にカビを付ける理由
鰹節造りには長い歴史があり、知恵と伝統の結晶といえます。そしてこのカビ付け作業は日本独特のものです。人為的に良いカビを付け、悪いカビの発生を抑える事になります。結果的に、風味を良くし、保存性を高めました。
重要な働き
「カビ付け」工程は優良カビを何回も繰り返し付け長い時間をかけて造ります。使用するカビは人には無害な良性のカビを使います。そしてそれには、重要な働きが隠されています。
「焙乾」や天日干しだけでは取り除けない、節の中の水分を減ずる働きがあります。
【その②】
水分を取り除くことで、有害な微生物の繁殖を防ぎ、保存性を高めます。
【その③】
旨味成分「イノシン酸」の含有率を高め、旨味を決定づける効果をもたらします。上品で口当たりのまろやかな、旨みの凝縮した味、とも言えます。
【その④】
カビの菌糸が脂肪分解酵素を分泌して、中性脂肪を分解することによりだしの透明度を高めます。
【その⑤】
カツオ節の香りを良くする重要な役割を果たすのもカビの力です。
【その⑥】
カビ自身が生産する抗酸化物質(コウジ酸)により、節表面の酸化を防止します。
優れたカビを使う
カツオ節の優良カビは、ミソやしょう油と同じように、カビの中でも優れたものです。昔は自然発生によりカビ付けを行っていましたが、品質をより高める為、現在は純粋培養した最適なものを人為的に噴霧して発生させています。
一番カビとして最初に発生するのはペニシリウム属で、色が青っぽい事から青カビといわれています。カビ付け期間は、2~3週間。
二番カビ以降は緑灰色のアスペルギルス属のカビが生えて来ます。カビ付け期間は、一番カビより1週間ほど長くなります。
この作業を三番カビまで人為的におこなわれますが、あと四~五番カビは自然に行われ、ついにはカビが生じなくなります。